十二国記、おもしれー!!!!!!!!

おもしれー!!!!!!!!

と思ったのでその話をします。

 

前置き

私ずっとアニメが見たかったんですよ。

  • 古め(出来ればセル画)
  • 異世界に飛ばされる主人公(出来れば女の子)
  • 顔のいい男が出てくる
  • 声優で気が散らない

以上の条件を満たす作品が。

ただ当てはまるものが全然見つからなくて。ずいぶん昔に見たエスカフローネくらいしか思いつかなくて。それでずっと唸ってたんですよね。

で、ある日突然「あ、本が読みたい」ってなって。その時気づいたんです。

十二国記異世界モノで主人公女の子でそこそこ古い作品(2019年に新刊出たけど)だな

ってことに。

嬉しかったですね。アニメじゃなかったけど、アニメもあるけど、でも原作がアニメじゃないからこそ声優で気が散らないし(※声豚なので下手なことが起きると気が散る)本が読みたい気持ちも満たせる。知らんけど多分顔のいい男もおるやろ。ほらいつぞやに十数年ぶりの新刊が出たときに店に並べられてた表紙の男とかも顔良かったし。シリーズのことほんとに何も知らなかったんですけど、あの時は話題になったので流石に最新刊の表紙は見たことありました。

というかその時も読んでみようかなと思ったことがあって書店で手に取ったんですが、ファンタジー作品なのにエピソード0は現代日本のホラー小説だったのでなんとなく気乗りせず、かと言ってそこを飛ばして読むのもどうなんや……?と思って悩んでやめたことがあり。

でも今回はどうしても読みたくなってしまったので、私はいそいそと図書館に行きました。買ってもいいんですけどね、置く場所がなくて……。

 

感想

というわけで読んだ順に書きます。ちなみに今まだ『風の万里 黎明の空』までしか辿り着けていません。よろしくお願いします。

あともう先に言っておくんですけどわりと変な順番で読みました。多分この順番に読む人いないんじゃないですかね。検索すると出てくる読む順番に従う人も多いだろうし。

 

①月の影 影の海

読む順番がよくわかんなかったのでフォロワーに聞いたらとりあえずここから読めばいいと言われたのでここから読みました。

これだよ、これこれこれこれ!!!!私が求めてたものは!!!!

もうね、スタオベでした。拍手喝采。感激感謝。やばい。こんなに欲しかったモノが出てきたことはなかった。これだよ。

以下、私が大喜びしたポイント

  • ろくに事情も説明せず、いきなり異界に連れ去る顔がいい男(※景麒)
  • 異界に連れて行かれて即保護者(※景麒)とはぐれる
  • 戦いを余儀なくされる環境に置かれる
  • 女の子だけど男っぽさも備える
  • 強さを道中で得ていく
  • 困難が降りかかる中を生き延びる描写

私ですね、異世界トリップ夢小説が……、好きだったんですよ……。右も左もわからないなか、何かの超自然的なものに“選ばれて”しまい、選ばれたがゆえに本心では望まない戦いを強いられたりしながら、成長していくのがね、好きなんですよ……。

アニメ探してる時、いわゆるなろう系を探さなかったのはこの、この望まぬ戦いが欲しかったからなんですよ。剣を持ったこともない細腕で必死に生き延びねばならなくなる過酷さにね、身を置きたくて……。

なんなら私はこういう話を書きたくて小学生の頭で必死に世界観をこねくり回してましたからね……。当時の私にこの本を与えられていたらどんなにかよかったことだろう、救われたことだろうかと本気で思いました。まじで。私が求めていたものはこれだった。

とにかく陽子の置かれた環境がまさしく私の欲していたものそのものだったので、もう本当に「これだ!」とまるで居場所を見つけたような気持ちがしました。嬉しかったですね。私がいるべきはこの世界だ、みたいなあのしっくりくる感覚。

ただまあ……、確かに連続して不幸に見舞われすぎてちょっと頭痛かったんですけども。えっ、こんなに不幸になるのかとは思った。いくらなんでも不幸の連続やなと。そのせいでTwitterネズミが出るまで頑張れという励ましがあるらしいと聞いて笑っちゃいましたけど。ちなみに私はそんなこと何も知らないので楽俊のことは当然のように疑ってた。いいやつだった。

 

どうでもいいんですけど、今にして思うと景麒めちゃくちゃピーチ姫でしたね。しかもほぼ出番がない。印象には残るのに結局人となりがさっぱりわからないままだった。おもろ。いっそジョウユウのほうが相棒感あった。喋らないし存在感ないけど(ちゃんと漢字でどう書くかも明らかになってるけどカタカナ表記のほうが馴染みがある問題)

陽子は完全に私の求めていた主人公像だったので特にコメントはございません。延王、延麒こと尚隆と六太は好きな人はめちゃくちゃ好きなやつだなこれと思いました。好きな人は好きやろこんなの。楽俊はさっき書きましたけどマジでいいネズミでしたね。

というわけで私が求めてたものこれやんけ〜!!!!と大喜びしてしまい、速攻でシリーズの他の作品も読むか!となりました。そう、私の手元にはあったんですね。魔性の子が。

 

魔性の子

シリーズに手を出すにあたって『月の影 影の海』が面白くなければ現代モノなら面白く読めるかも、逆に『月の影 影の月』がめちゃめちゃ面白ければ絶対に続きを読みたくなるだろうという理由から、一緒に用意しておいたんですよね。魔性の子

この時ばかりは自分の用意周到さに痺れちゃったね。

よかった、このシリーズの本が速攻で読める!!!!って嬉しかったもん。

まあ、こんなタイミングで読むな、と言われそうなんですけど、あんまり面白かったのでね……。もうなんでもいいからシリーズ他作品を読みたくて……。

 

というわけで読もうとしたんですけど、裏表紙のあらすじに高里という名前があり、おやこれは確か今行方不明になっているどこかの国の麒麟の名前だと気づいてしまい。まあもうね、そこからは怪異に教われるホラーとしての楽しみ方は消え失せました。開始0秒で高里くんは麒麟だし……とネタバレ状態で読んでしまい。

1巻のほんの一瞬出てきた名前を覚えてたおかげでまさかこんなことになるとはね、って感じでした。たぶん覚えてなかったら普通に初見に近い感想抱いてたと思う。普通に終盤でようやくつまりこの子は麒麟だったんだ!?!?!?!って言ってたと思う。覚えていたので麒麟だもんな……!ってなりました。麒麟

 

肝心の中身について。まず思ったのが広瀬さあ……でした。ずっと高里くんに肩入れしてて、彼の言う住む場所が違う、ここじゃない場所に帰らなければならないという感覚に自分の抱く生きにくさを重ねて苦しむ彼の仕草にひたすら情緒をかき乱されました。

だってかたや本当にこの世界にいるべき人間ではなく、かたやただの生きづらい人なんですもん。その同情が君を苦しめるんだよ……と何度思ったことか。実際ラストシーンで置いて行かれる、自分がただ居場所のない生きづらいだけの人間であることを突きつけられた慟哭は見ていて胸に迫るものがあり。

Twitterでもつぶやいたのですが、なんというかこの感覚ってテスト勉強全然してないわ〜と言った友人が、自分と同じノー勉強状態なのに普通に高得点を叩き出して普通にいい大学に行っちゃったとか、同じマイナー性癖の仲間だったのに、ある日向こうがクッソバズってそのまま商業連載まで始めちゃったとか、規模こそ違うものの、わりと身近に起こり得るであろう嫌さなんですよね。お前の居場所はどこにもないよと告げられ置いて行かれた広瀬の感情って。それが本当にこう、胸を抉るものがありました。嫌すぎる……。

一方で高里くんはめちゃめちゃ魅力的で。なんか妙に色気あるというか、妙に目が離せないものがあるというか。なんかそういう意味で魔性っぽいなこの子〜とか思ってました。

 

 

③風の海 迷宮の岸

魔性のショタすぎ!!!!

高里くんというか泰麒、可愛すぎ!!!!!!!!

私の気は狂った。

魔性の子で散々語られた昔の神隠し時代のお話だったわけですけど、ま〜あ、も〜う、ど〜しましょうってくらい可愛い。泰麒かわいい。助けてくれ。仙女たちが可愛がるのもよくわかる。かわいすぎる。私は善良で優しくて良い子で可愛い年下が大好きなんだ……、へへ……。

でさあ、そのさあ、かっわいいショタにさあ、仏頂面で不器用な男(景麒)が添えられてるのはさあダメだと思うよ、私。もうどうしようかと思ったもん。景麒に泣かされても自分が至らなかったと言うのがよいこ仕草で愛おしすぎるし、その景麒が絆されて柔らかい表情を見せるようになるのもいい。

まあなんかそのおかげで結果的に景麒が傾国みたいになっちゃったけど。

言葉足らずで厳しくて仏頂面で不器用な男が時折り自分に向けて小さく微笑んだら私でも頭おかしくなりそうだもん。気持ちはわかる。気持ちはわかるけどそれで国が滅ぶって言われるの無理すぎる。嫌なシステムだな、麒麟と王。

 

ところで驍宗の話なんですけど、この人マジで傑物って感じの人ですね。気風もよくて立派で、まあなんと慕われそうな人物かと。なんでこういう本人にもやる気がある人物を王に選ばねえんだろうなこのシステムはよお……、と思いました。いや実際のところ驍宗は王だったけど。銀髪ロン毛で嬉しいけど。銀ロン毛の王は嬉しい。

そんな彼に契約するシーン、なんか許されざる恋かなんかしてんの?みたいな味わいで……、よかったですね……。罪と思いながらもどうしても驍宗を引き留めたくて仕方なくて、とにかく何かをしたくてがむしゃらに言葉を口にしたあの感じめちゃくちゃよかった。

ただ麒麟という生き物は王以外に傅くことのできないもの、と説明はされていて、だから本当に王じゃなければ契約ってできないことを知ってるんですよ。私はすでに。だから泰麒が罪を犯したと思い込んでるのも本来ならば即否定できたところ、これがね、できなかったんですよ。

泰麒はこの後再び蓬莱に流されるから。

すでに魔性の子でそれを知っているんですよ。だから百の否定ができなかった。彼がもしここで本当に罪を犯していたならば。本当に間違っていたならば。そのせいで蓬莱に流され一才の記憶を失ってしまったのだとしたら。

彼がどうして戴国を離れてしまったのか、その理由を知らないまま、国を離れて蓬莱に流されそこで苦難の人生を歩んだ事実を知ってしまってるのでね、余計にむちゃくちゃ疑った。

そういえば驍宗の王気を怖いと感じてたの、なんとなく泰麒自身の怯えの写し鏡みたいでいいですね。景麒は畏怖と言ってましたが、その畏怖の根元に無自覚な不安にこもっているみたいで。自分の能力に自信がない。不安である。だから王を前にして身がすくむ。力あるものを前にして、果たして自分で良いのかと思ってしまう。なんとなく彼自身の脆さを反映してるようでよかったです。そのせいで事態がややこしくなっちゃったけど。

でも景麒と驍宗と尚隆と六太のみんなでそんなことないからねって教えてあげるのは……、よかったですね……。めちゃくちゃノリノリで悪役ごっこする尚隆はやりそー!って感じだし、お前もういい加減にしろよって止めに入る六太もかわいい。説教する景麒もすき。何気に驍宗が演技派なのもじわじわくる。

というか、そうやって不安を抱いていて自分を王ではないと否定さえした泰麒を、一切責めたりもせずにただ自分はそれでも王であってよいのかと尋ねる驍宗はほんま凄い。王に向きすぎている。てか何より保護者ムーブ良すぎるんだよな……。頼れる人すぎる。なんなんや。

 

とまあ見ての通りだいぶおかしくなりました。本当にありがとうございました。

 

 

東の海神 西の滄海

前2巻(魔性の子は含めず)はどちらかと言えば世界の仕組みに関する説明に重点を置いたお話でしたが、ここからは国を治めることに比重を置いたお話になりましたね。

尚隆と六太の2人が出会い、お互いに延王・延麒と呼ばれる立場になるまでに彼らの身に起きたこと、彼らが抱いた苦悩や葛藤や責任感や、色々な「感情」をぶつけられた話でもあったなあという印象です。

王はいつか国を滅ぼすものという六太の話、確かに凄まじい説得力があるんですよね。彼の蓬莱でのバックボーンからして為政者が国を荒廃させたことが滲み出ているじゃないですか。

しかも、王の治世がまずくて国が荒廃するって言うならまだしも、あの世界には王が不在でも国が荒れるっていうシステムが備わっている。王がいても治世がまずければ国が荒れ、いなければそれだけで国が荒れる。最悪すぎますよこんなの。

そうなると確かに王を選ぶという振る舞い自体に忸怩たる思いを麒麟としても抱かねばならなくなると思うんですよ。やっぱり何回考えても麒麟の立ち位置しんどい。王が暴れると連帯責任か何かのように病む生き物なのほんと……。

 

かたや王の尚隆はちゃらんぽらんな適当男に見えて、その実誰よりも思慮深いし頭も回るし民のことを考える良き王なのがこう……、好きな人にはたまらんやろうなってキャラ造形してませんかこの人。こわい。絶対この男に狂わされた読者おるやろ。わかるよ私には。好きな人はたまらん好きだろこの感じ。

そんな彼もまた蓬莱生まれなわけですけど、500年の治世、六太(苗字なし)とほぼ同じ時代の人間、それなのに小松姓を名乗っている、のあたりでなんとな〜く察してはいましたがやっぱり一国の王でしたね。王というか当主というか。

そしてこの頃から変わらない民あってこその王であるという姿勢、ほんとに素晴らしい。マジでなんでこういう人を王に選ぶことができないんですかね……。いや似たような人材ばっかりになるのはよろしくないというのはわかるんですけど、とはいえ慶国の予王みたいなことになるともはや選ばれた本人も民もみんなが可哀想になるやろ……。

 

この話、尚隆と六太、更夜と斡由が対比になってるのが綺麗でしたね。かたや一見ふざけているように見えてその実誰よりも国のこと、民のことを考えている人間。かたや誰よりも国と民のことを憂いているように見えて、実のところ自分のことしか考えてなさそうな人間。そしてそれに仕えようとする者たち。

双方から見る王とは何か、国を収めるとは何かの物語はとても構造がしっかりしていて、なんとなくここからは毛色が違う話になるなあ〜と予感めいたものを抱かせてきました。

とかくシンプルに面白かったです。泰麒に情緒かき乱されてウワァ!!!!となってたのとは大違いだよ。

 

 

風の万里 黎明の空

東の海神〜は似たような構図の人間たちの「違い」を描いてきましたけど、今度は違う立場の人間がそれぞれに成長を模索して歩いていくその過程で運命に絡め取られるように出会いそして気づいていく、みたいな構造の話だったのがめっっっっっちゃくちゃ好きです。

表紙とあらすじの時点で正直おそらくそういう話になろうとは予想してましたし、陽子の信頼できる官吏が欲しいという言葉からきっと女の子たち2人が協力してくれるんだろうなと予想もできてたんですけど、それでもストレートにそこに欲しいものを投げ込んでくれるとね、私は嬉しい……。

こう、三つ巴というか、三つの勢力が相互に干渉しながら物語の中心に集まってくる感じって読んでて気持ちよくないですか?

なんかナメック星でドラゴンボールの奪い合いしてた時みたいなワクワクとストーリー構成に対する気持ちよさがありましたね……。すみません私、趣味が中年男性のそれなのですぐドラゴンボールのこと例えに出してしまうんですよ。すみませんほんと。

 

まあちょっと人名と土地名と勢力が多すぎて一回挫折しそうになりましたが。比較的こういう物語を読む時、わりと小難しいものを読み飛ばすというか、重要なら頻繁に出てくるからそのうち覚えられるだろと思いながら読んでるんです。実際覚える。ただ、それをしてもなお今回はちょっと大変でした。まあ……、十二国記の読みすぎて恐ろしいレベルの寝不足だったんでしゃーないんですけど。

 

ところで今回も景麒は影薄めでしたね。出番あるのに他の登場人物たちの印象が強すぎて存在感がそんなにない。すごいなこいつ。

下僕ですとか言いながら陽子を訪ねて盛大に勘違いされてたあたりとかはおもしれー麒麟ってなりましたけど。おもしれー麒麟すぎるんだよなこの男。ほんとおもしれー麒麟。悔しい。一瞬だけ陽子の振る舞いに泰麒を重ねてるところでグェ……ってなったけど(※2人のやりとりが致命的に好きだったため)

そういえば景麒は生来言葉足らずで表情も硬いし性格も生真面目の堅物なわけですが、そんな彼が泰麒にしたように優しく振る舞うの、ほんっとにパンチ効いてるんですよ。うっかり絆されそうになる。絆されるならまだいい。身近にいたら普通に惚れかねない。それくらいギャップが効いてるんですけど、だからこそ予王がおかしくなり、ひいてはそのせいで陽子が軽んじられてる(女王続き問題)わけで。

陽子の資質に対して不安を抱いてるってのもあり、かつ優しくしたせいで前の王が錯乱したというのもあり、景麒もこれで中々に気が休まらない立場ですよね……。

やっぱこの王と麒麟のシステムどうにかなりません?

 

 

とまあ感想はこんな感じでしょうか。やっぱりどれ読んでも面白くていいですね。

ただ、やっぱり困難に見舞われながらもこれから良くなる慶国の話や、長年の盤石な治世が続く雁国などと比べるとこのあと王も麒麟もいなくなる戴国の行く末が気になるところはありますよね。気になりすぎる……。

などとここまで書いたんで締めの言葉を入れたかったんですけど、早く続きが読みたいので終わります。

以上です。