あまりに面白くて18時間くらいで全話見ました。徹夜しました。眠くて倒れそうなのに胸に残る淡いものと放置しまくっている原稿のことが頭から離れなくて、私は今こうして記事を書いています。
とりあえずネタバレにならなさそうなことから書こうと思ったんですけど、あの、ちょっとこれだけは言わせてほしい。
ムソルグスキーの展覧会の絵が劇的なシーンで流れるのはいいんだけど、ミームが汚染されすぎてドロッセルマイヤーの墓が珍百景にしか見えねえ!!!!!!!!
ありがとうございました。ずっとこれが言いたかった。
すっごい険しい顔で驚くふぁきあと流れるBGMとドロッセルマイヤーの墓の光景が全部うまい具合に組み合わさって完全に珍百景だった。
さて気を取り直して作品の話をしていきたいのですが、プリンセスチュチュ検索してたどり着いたまだ作品を見ていない人向けのとりあえずネタバレしない範囲でのお話だけしておきますね。
どういう人が見ると刺さるか
ネタバレなしで表現すれば、ウテナとみにくいアヒルの子と白鳥の湖が正面衝突したような作品。お話としては心を無くした王子様のために踊るプリンセスのお話、とでも言えばいいでしょうか。
ちょっとドジで元気な女の子あひると、彼女の憧れの王子様であるみゅうと、そしてみゅうとの恋人で美人な優等生るう。あとみゅうとのモンペしてる嫌味なオレ様のふぁきあ。この4人が主要な登場人物。
バレエに詳しくないのでうまく語れないのですが、とりあえず1話見ただけでもみにくいアヒルの子オデットと美しく完璧なオディール、二人に感情を向けられる王子、という白鳥の湖にみにくいアヒルの子要素を混ぜこんだような人間関係なのがなんとなくわかります。
なお、なんか一人例外がいますが、私はもはやふぁきあはいいぞbotなのでノーコメントです。好きだろ、あんな男。
というわけで世界観も物語もなんとなく御伽話的で作り物めいていて、でもそれが不自然でも嫌味でもない仕上がりの作品です。
ウテナ好きな人とかは世界観わりと好きなんじゃないかな。あとバレエ好きは普通に楽しめるような気がする。それと、優しくて穏やかなイメージカラー白の王子様と、ぶっきらぼうで素直じゃないけど実は優しい騎士のどっちが好きかと問われて後者……ってなる人はわりと見ても損しないのかなと。中盤本当におかしくなるかと思った。ふぁきあほんとお前……。
あ、あと水樹奈々のめちゃくちゃ最高の演技を聞きたい人にもおすすめ。マジで声優としての彼女の演技で一番好きかもしれないです。マジで。
ネタバレを含む作風解説
どういう作品なのかについて、もう少し踏み込んだ表現をするならば幾原邦彦が作った映画すみっコぐらしとびだす絵本とひみつのコみたいな感じです。
すみっコぐらしの映画を知ってる人なら正直どういう話かちょっとお察しできるくらいクリティカルな表現だと思うんですが、まあそういうことです。あひるとひよこ、奇しくも両方ちっぽけな鳥ですからね。はは……。
お察しください。
以下ネタバレ感想
まーーーさかドロッセルマイヤーの書いた物語と現実が混ざってる世界観だとは思わなかったですよね……。すみっコぐらしの映画って言ったのはそういうことです。あれ絵本の中に入り込む話だからね……。
と、中盤ですでに結構ほぇ〜ってなったんですけど、一番驚いたのは
ふぁきあがドロッセルマイヤーの子孫で現実に干渉できるお話を書ける能力持ちだったこと。
いやまあ確かに私もね、おかしいとは思ってたんです。
- 王子に心を返してあげられる唯一の存在である姫君、プリンセスチュチュ
- カラスの血を引く美しく孤独な黒鳥の姫君、クレール
- お話の中の王子様であるみゅうと
という異能の持ち主だらけの中、ふぁきあだけ常人だったので。ドロッセルマイヤーの筋書きの中では騎士の生まれ変わり、でもその役目を果たすことも筋書き通り死ぬこともできずにもがく人。それがふぁきあだったので、最後の最後に世界に干渉できるただ一人の存在として明かされたのはそうきたか……って感じでしたね。
ただまあ、ぶっちゃけ鳥のあひるの姿になったあひるに優しく微笑む姿も、人知れず泣く姿も、それをあひるに見られていたと気づいてものすごくバツが悪そうにする姿も、騎士として苦しむ姿も、とにかくずっとこいつ一人だけ盛られすぎてるくらい盛られててずるいし好きすぎるな……になってたのでそこまで驚きはしなかったんですが、マジでそうきたか……って感じでした。
中盤マジでずっとふぁきあに大興奮してたし、あひるとふぁきあが結ばれねえかなと思ってた。でもなんかこの二人って最後まで互いを信頼し合う相棒というか、運命共同体としての関係性を保っていたのが逆にエモくてよかったですね……。
で、関係性といえばみゅうととるうのカップルなんですよ。私まさかこの二人が結ばれるとは思わなくてわりとマジでひっくり返りました。マジで????
王子は誰も選ばず物語に戻って消えると思ってたので。あひるとるうとふぁきあ、全員がクソでっかい感情を残されたまま王子だけ消えるとかそういうことになるのかなと思ってたんですが、どうやら頭ドロッセルマイヤーだったようです。
というか、視聴者は全部知ってるじゃないですか。あひるがみゅうとを恋しく思う気持ちこそが、あひるをプリンセスチュチュという悲劇の姫君として成立させた要素だということ。プリンセスチュチュの立場がある以上、どんなにみゅうとを愛していてもあひるはその思いを口にできないこと。全部全部知ってるじゃないですか。
だからこそ、散々プリンセスチュチュに頼って力を利用しておいて最後は別の女を選ぶってなんだてめえお前出ろクソ王子みたいな気持ちになるんですよね。めちゃくちゃ憤りたくなる。
でも一方で、るうの一途な思いが報われて幸せになったことに対しての祝福の気持ちもあるわけです。よかったね……ってなる。普通に彼女が幸せになれたのはよかったと思う。
あとそもそもみゅうとはチュチュの正体もあひるの正体も、恋心を告げられなかった事情も全て知らないままなんですよ。そりゃまあどうしようもないわな。
加えてプリンセスチュチュという役柄自体が他の誰よりも舞台装置めいていて、彼女はただひたすら王子に心を取り戻させて儚く消えゆくことしか望まれてないわけですよ。
あまりに報われなさすぎて苦しいんですけど……
あひるにとって、自分とみゅうとが結ばれることより、みゅうとが王子様に戻って幸せに笑えることが一番望むことだったわけで、その点で彼女の願望は叶ってるんですけど……。一方で恋心は本当に最後まですこしも報われないまま終わるのでうぇぇぇぇ……ってなりました。たすかる。私はプリリズRLの最終話でいとちゃんがコウジと結ばれた事実に時間差で泣き出すなるちゃんのシーンがむちゃくちゃ好きなので。何気にヒロ様とどうにかなりそうでどうにもならなさそうな雰囲気出してくるところ込みで好き。
だから恋が叶わずふぁきあとの関係性も信頼し合えるパートナー止まりで終わるあひるがぶっちゃけ好き。
というかなんならご都合主義で人間の姿を手に入れることすらないんですよね。そこに関してはふぁきあ書け!!!!いいから書け!!!!って思いました。あいつが書いたら現実になるので。でもたぶん、ふぁきあが最後に湖畔で紡いだ物語は……という終わり方なのが憎いですね。
ところで私、今原稿をしなきゃいけなくて。
もうねほんとに書けないんですよ、書けなくて書けなくて書けない。
終盤ふぁきあが書けなくて苦しんでるの見てこっちの胃まで痛くなりました。
新刊落としそう。助けてくれ。
以上です。
あ、関係ないんですけど、後半のドロッセルマイヤーがひたすらバドエン至上主義の精神リョナラーじじいでちょっと笑いました。
ぶっちゃけ私も頭ドロッセルマイヤーなので、悔しいけど悲劇は見てえよなと思ってました。
今度こそ以上です。