概念・映像・音は100点、シナリオ5点

『竜とそばかすの姫』を観てきましたがタイトルの通りの映画でした。

他はこんなに完璧なのにシナリオが5点しかねえ。変な映画だな。まあ世間的な細田守作品だいたいこんな感じの評価だけど。

という話をするだけの記事です。ちなみに私は明日のナージャがめちゃ好きで、少女革命ウテナ空より淡き瑠璃色のが大好きな人間です。細田守監督作品だと時をかける少女が好きです。お察しください。

あと傷ついた心を隠し他者を寄せ付けず一人で生きることを選ぼうとするアウトローと、それを救おうとする姫の概念に超絶弱いのでよろしくお願いします。お察しください。自分で言ってんのに自分が可哀想になってきた。

 

 

さて、序盤から概念の話をすると重すぎるので音楽の話からしますね。

私わりとKing Gnuが好きで、常田氏の作る音楽が好きで、ミレパの曲も好きで作業用によく流してるんですけど、まあ〜〜〜、よかったです。映画館の音響で聴くイントロの迫力たるや。これ計算して作ってるんだろうな。スマホで聞いてもかっこいいけどあの迫ってくるような音の洪水感がどこにもないもん。

で、またほかの曲もいいんですよね……。ややハスキーというか少しクセのある中村さんのボーカルが映画館の音響に乗ると、人間のようでいて人間でない、不思議でとても美しい響きになって聴こえるんですよね。すごく良かったです。マジで良かった。

 

 

次は映像の話。細田守監督といえば電脳空間みたいなところありますけど、個人的にはぶわっと押し寄せる花びらに包まれる映像とか、ドレスを纏った少女をロマンチックに見せる構図とか、夜空をバックに見つめ合う二人とかだと思ってるんですよね。そうだね、明日のナージャのOPだね。

城で舞踏会始めてそのまま夜空に飛んでいってクライマックスで優しく竜のマズルを抱きしめる映像見せられた時はどうしようかと思ったよな。

明日のナージャのOP見ていただくとわかるんですが、ヒロインのナージャが旅先で出会った男たちと次々ダンスしながら最後に彼女が恋したフランシス(キースもいるよ)と夜空に飛び出して月をバックにキスする手前で終わるんですね。

どうしようかと思ったよな。

ちなみに私がナージャで一番好きなのはフランシスの向こう側という回なんですが、そうですね、細田守担当回です。映像が綺麗なのもあるんですけど、これ、これの見せ方から生まれる三角関係の雰囲気、これが細田守なのでもうダメ。

 

というわけで概念の話です。

さっきも書いた通りフランシスの向こう側、という回はナージャが恋するフランシス……、ではなくその双子の兄のキースとのエピソードで。ノブレスオブリージュの精神に基づく温厚でやさしいフランシスと、貴族の傲慢を憎みやや影と毒のあるキース。この時ナージャは彼らが別人であることを知らなくて、だから愛するフランシスの知らない部分(それはキースという別の人なんですけどね)を知った喜びであなたが好き、みたいなことを言うんですけど、もうあの綺麗な画面のせいでこれキースが好きなのか〜!みたいに騙くらかされるんですよね。ちなみに私はキースの方が好きです。そうでしょうね。私は彼がムチでしばかれているシーンを見て以来ヘキが歪みました。推しの絶命スチルをこよなく愛しています。

で、さっき書いたウテナ『空より淡き瑠璃色の』なんですけど、これがまた……、またこれが……、これは脚本も細田守なんですけどこっちはガチの三角関係なんですよ。ナージャ細田守の演出に三角関係を誤認させられてるんですけど、こっちはマジの三角関係。これがもう私はほんとに好きで……。思わせぶりで意味深でじっとりしていて人の思いの矢印が向き合わない虚しさを描いてて最高に好きなんですよ……。

という前提を頭に入れた上でお聞きください。

本当はしのぶくんが好きなのにルカちゃんの恋を応援して自分は失恋することを決めた鈴のシーンマジで最高

最高でした。細田守、一生思わせぶりな男と女の三角関係描いててほしい。繋がりそうで繋がらない、思わせぶりで痛くてつらくて誰も幸せにならない一方的な自己満足で幸せになった気になる三角関係を描いてて欲しい……。明確に三角関係じゃなくてもいい……、演出で事実誤認をさせてほしい……。もうほんとに最高だった……。ちなみに私は負けヒロインが好きです。まあ現実は残酷でしたけどね……。(三角関係じゃなかった)

あと!概念で言うと!

傷ついて痛む心を隠し他人を寄せ付けず孤独であることを選ぼうとするアウトローに惹かれる姫の概念に超絶はちゃめちゃ泣くほど弱いので死にました。

もうちょっとなんだろう、平たく言うとスターウォーズのハンソロとレイア姫みたいな……。愛されて優しい環境で育った箱入り娘の姫ほど悪い男に惹かれちゃうやつ……。マジでこれの描き方100点だった。というかナージャを思わせる映像とこの概念の合わせ技で私の頭がおかしくなった。一生この絵面だけ見せててほしかった。姫が竜を救え、姫が姫のまま竜を救え。

ちなみに絶命スチルを愛でている推しもこのアウトローの概念だし彼にもガチで姫がいます。ふざけないでくれ。

 

 

シナリオ

これだけ素晴らしい概念を見せられたのにあのシナリオってなんだよ。

なんでだよ。アウトローと姫の構図こんなにも完璧なのになんでオリジン同士はあんなわけわからんことになるんだよ。なんでだよ。教えてくれよ……、なんでだ……、なんで……。

以下は映画を観た方にしかわからん話です。

  1. 虐待されているという映像証拠が残っているのならばそれを利用できなかったのか(まあ日本は親権が強くて児相の人は思うように手を出すことができずもどかしくて仕方がない、という話を実際の職員の方から聞いたので、映像消化があるとはいえ手出しはできないかもしれないけど)
  2. 鈴は二人を彼らの父親から守った時に顔面に怪我を負わされ、髪を掴まれているため、警察を呼べば確実に署に連れて行かれる案件である。それを利用することはできなかったのか
  3. というか高校生の鈴が一人で二人の家に乗り込んでいって何をするつもりだったのか
  4. しかも案の定なんも解決してないやんけ

以上、映画を観た人にしかわからん話でした。

いやそれ以外にも意味わからんのだよな。竜の忌まれ方とか。子供からの支持しかないってのも変な感じだった。だってなんか竜って好きな人はめっちゃ好きだけど嫌いな人はとことん嫌いで熱烈なファンと強烈なアンチが同軸に存在してる存在じゃないですか?ああいうアングラ感を崇拝する人って一定数いるでしょ。竜の見た目もばちばちにかっこいいし。というか格闘場で相手ボッコボコにしてるだけってのもなんかな……。50億アカウントあるんでしょ?その中の300人ちょい凍結させただけで50億人から排除されそうになるの無理すぎね?

ただ、このオリジンの方の兄弟の概念は好きそうな人マジで本当に好きそうだと思いました。また概念。細田守監督もうなんでもいいから概念だけで映画を作ってほしい。概念だけは100点。

 

余談

プロメアのクレイ・フォーサイトみたいな見た目した淫獄団地の正義マンCV森川智之が面白すぎました。面白すぎる。

あとツダケンの男好きな人は好きそうな感じで笑いました。わかってたけど男がみんな最高。竜も最高。竜と彼のオリジンは好きな層が全く噛み合ってない(前者は世界を壊すアウトロー、後者は弟のために痛みを引き受けて耐え続けるいたいけな少年)なと思ったくらいそれぞれに魅力があったし、しのぶくんは終盤にかけての100点満点中5点の展開で意味不明理論を喋り始めたあたりでだいぶ興醒めでしたが、それさえなければ最高にいい男だった。ママだし。

あと幾田りらちゃんが声優上手くてびっくりしました。めっちゃうまい。私はYOASOBIが好きなので、声優まで上手で普通に良かったです。

でもやっぱり一番面白かったのはクレイ・フォーサイトの見た目した淫獄団地の正義マンCV森川じゃないかな……。面白すぎたよな……。

 

以上です。