こちら10年温めた円盤でございます

前回のブログ以降、順調に劇場へ足を運び通算5回目のプロメアをキメてきました、ぱふぇです。こんばんは。毎週映画館に通いつめ、気づけば応炎上映にまで参加していました。なんでこうなった。積極的に声を出して行くつもりで何叫ぶかも考えて行ったんですが、何故か当日急にクレイ・フォーサイトという男について思いつめてしまい、彼氏ヅラして腕を組みながらアイドルを見つめるクソオタクムーブをキメました。我ながら意味がわからなかったです。せっかく滅殺開墾ビームして♡うちわまで作ったのにね。そんなプロメアも今週木曜日に最寄りの映画館での上映が終わってしまう……、と思ったら延長になったので、めでたさのあまり6回目をキメに行く予定です。

プロメアといえば、ニュータイプの対談記事、大変良かったですね。クレイ・フォーサイト解釈最大手ですよあんなの。でね、あの記事を読んで「ああそういえば、私まだ『噂の男』は観たことないな」って思ったんですよ、思ったんですね。

 

円盤買いました。

 

10年前からずーっと観たくて、ニュータイプの対談で喜怒哀楽全てを笑顔で表現する男があの舞台でのセリフだったのを急に思い出して、じゃあ円盤買おうって……。買っちゃいました……。長い前置きでしたね。というわけで以下、感想です。まだ上手いこと咀嚼しきれてないです。

セリフが凄かったせいでたまにすごい単語が出てくるけど許してね!

 

 

 

 

 

 

 

 

支配人はボンちゃんにアキラ師匠重ねてたよね?

アキラ師匠もボンちゃんも骨なしポテトの漫才の良さをわかってなくて、同じような批評してたところで「な〜〜るほどな?」って思いました。な〜〜るほどな?

多分だけどボンちゃんのこと愛してはなかったでしょ、いや好きは好きなんだろうけどアキラへ注いでいる愛情の1/100000も彼には注いでなかったよね、と思いました。っていうかぶっちゃけボンちゃん通してアキラのこと見てたんだろうなって……、ほんとさあ……。

それにしても支配人、あの男の何が良かったんでしょうね。だって「お前が俺見てちんぽおっ勃ててるの考えただけで生理的に無理」って相当めちゃくちゃな罵倒と拒絶じゃないですか。そうまでして突き放されてもなお愛して愛して愛してるってどうしてなんだろう。ほんとに何が良くて死んでから12年も愛し続けてたんだろう。いや、あれはもう愛情じゃなくて狂信とか依存とかそういう部類のものだと思うけど。

直接的に危害を加えてくるモッシャンと違ってアキラは表面上では優しくしてたからかなあ。DVのハネムーン期みたいなやつなんですかね。それにしたって感情が深すぎるというか、いやほんとあの男の何が良かったんだろう支配人。あれを愛情と呼ぶかはさておき、愛情というもの自体は理屈なんかじゃないんですけども。

 

と、いきなり支配人の抱いた盲信の話をしましたが、支配人に限らず登場人物全員「なんで???」って言動と行動しか取らないんですよね。この舞台の感想を一言で表現するなら、形のおかしい愛情が蔓延ってんなーという感じでした。第三者から見たら「イカれてる」でも当事者からすれば「至って普通」みたいなズレが全体を包んでいるというか。

加藤は父親への愛情故に復讐に走ろうとした。

DV男のトシと股の緩いアヤメの、一見すると破綻した関係にも愛情はある。

支配人は壊れた愛情をずっとずっとアキラに注ぎ続けている。

一事が万事こういう調子で、抱いた感情それそのものは多分間違ってないのに、取ってる行動はぜーんぶ倫理的に間違ってる、そんな人たちばっかり出てくるんですよね。濃度が高すぎるんですよ、感情が追いつかないまま殴られて、殴られて、殴られる。観終わった後はもうへろへろでした。観る暴力って言えばいいのかな。とにかく凄い、凄すぎて気持ちも頭も整理できなくて、アウトプットが全く捗らない。すごい。

全体的に利己的で押し付けがましく生々しくていやらしい感情が迸ってる舞台でしたけど、その中でも唯一パンストキッチンの2人の間にあった絆だけが「模範的」だったので、そこもまた恐ろしかったんですよね。暗闇で後頭部殴られたみたいな気持ちになりました。

だってあの二人のやりとり、激しく気持ち悪いんですよ。あのタイミングであんなに模範的なやり取りをされたら、なんだこれはってなってしまいますよ、なんなの。

相方の死は自分に責任があると悔やみ続けるモッシャン、そんな彼に自分が死んだのはお前のせいじゃないと告げたいアキラ。ここだけ切り取るとなんと美しきコンビ愛って感じじゃないですか。だけど周辺には重度の火傷を負ったトシちゃん、首を絞められたアヤメ、全身血まみれの加藤が転がってる。支配人は己の愛のために嘘をつき、ボンちゃんはただただ怯えてうずくまるだけ。明かされる二人の思いの美しさと絵面の醜さが全然噛み合わない。

というかパンストキッチン、二人して息を吸うように人を傷つけ嘘で身を固めて生きてきてるので、そんな彼らのコンビ愛だけが本物という事実がもう不気味で。散々人を踏みにじっておいて自分たちだけは瑕疵のない完璧なコンビ愛を結ぼうとする姿のなんとグロテスクなことか。

特にモッシャン、怖すぎませんかあのオチ。ぜーーーんぶ正気の沙汰っていうあれ。アキラの幽霊(?)の姿は見えなくなったのに、それでも普通にアキラは語りかけてる辺り、もしかするとイマジナリーアキラ見えてるのかもしれませんけど。本当の意味で正気ではないんでしょうけど。でもさあ……、本当に心神喪失してる人間が刑法39条のことなんか意識するかよって話ですよ……、あれどんなに甘く見積もったって心神耗弱止まりでしょ……。

アキラは心が弱い情緒不安定アンバランス男って感じで、この作品の中だと一番「探せばこういう人山ほどいるよね」ってタイプなんですよ。図に乗りやすく、見下した相手には当たり散らし、やらかすことはみみっちく、人を殺す度胸はないがハムスターなら殺せるってという微妙な残酷性。実際に人を殺した人間が複数出てくる中では際立って地味なんですよ、ここ。完全に巻き込まれただけのボンちゃんを除いた、渦中にいる面々の中では、ある意味一番普遍的な存在なんじゃないかなーって思うんですよ。まあね、既に死んだ人っていうのもあってか支配人に対して以外の影響力はほとんどないし。

一方モッシャンは、それまでずっと単なる暴君としか描かれてないんですよ。むしろアキラの闇深さによる被害を受ける側としか見えない。だけど蓋開けてみると遥かにアキラよりヤバいんですよね。人は殺せなかった、どころか支配人に手を下させようとしていたアキラと違って、モッシャンは平然と自分の手で人を殺している。しかも自分が罪に問われないために狂人のフリさえして。

私たち完全に騙されてたんですよ、本当に恐ろしいのはアキラじゃなくてモッシャンだったのだから。だってユキ雄を半身不随にしたの、アキラだと思いませんでした?凄く怪しかったじゃないですか。一方モッシャンは「相方のせいだった、あいつはやると思っていた」と平然と相手に罪をなすりつけてる。我々にそうとも悟らせず。怖すぎる。登場人物全員怖いんですけど、モッシャンだけ群を抜いて怖くないですか?もうなんか凄すぎる。

モッシャン役の橋本じゅんさんがまたコミカルな演技をとにかく巧みにこなす人なのがね、怖さに拍車をかけてるというか。演技の質がずっと陽で、陽のままぺろっと残酷な事実を口にするからまあ怖いよね、怖いんだよね。堺雅人との舞台の共演が何故か多い(これ以外だと三谷幸喜脚本の『vamp show』とか、こよなく愛する『蛮幽鬼』が共演作)のもあって、この中では堺雅人以外で一番演技に馴染みがあるんですけど、それにしてもすげーなって思いました。いや出演者全員、誰を見ても演技が凄まじすぎるんですけどね……、モッシャンが一番印象に焼きついたよね……。

 

そういえば私、この作品の予備知識が先述した「喜怒哀楽〜」のセリフが出てくることと、あと「キスシーンがあるよ」ということしか知らなかったんですよね。なんでみんなキスシーンのことしか話題にしないんだって思ったんですけど、通して観てよくわかった。

ネタバレにならず、かつインパクトがあるシーンだから。

今で言う例のビームみたいなもんだわ。ネタバレといえばネタバレだけど、事前に知っていたところでストーリーを知ることで手に入る驚きには何の影響も及ぼさない要素だわこれ。しかも「え?なんで?」って興味を引きやすい要素だわ、なるほどな、布教によくある手口ですね。

ちなみにですが、私はどう考えてもそんな空気感にならないけど誰となんでキスするんだ……?と思いながら画面を見つめていました。そしたら出てくるじゃないですか、アキラが。こいつだって思ったんですよね。だってアキラを見つめる目が他と違ったから。明らかにまとってる空気感が他の人に向けるのと違ったんですよ。現在は一貫して冷徹、過去では飼い主に振り回される健気な小型犬じみた演技で表現されてきた支配人の表情が、目つきが、あの瞬間アキラを前にした時だけ違うんですよ。

後々になって恋愛感情があったとはっきりした時、堺雅人の表現力に度肝を抜かれたりしました。同じにこにこ顔なのに、二人きりの時だけ纏う雰囲気がぜんっぜん違ってたので。私の中で堺雅人の演技の「怖さ」は既にお家芸だったので、それと対極にある「愛情」をここまで感じ取れたのがとても良かったです。凄いなこの人ほんとに。

あとキスした相手普通にボンちゃんでびっくりしました。

 

さて、とりとめがなくなってきたのでここらで終わりにしますが、なんていうか2時間に渡って海水を飲まされ続けたとでも言いたくなる作品でした。真水がないからって海水を飲んでも、海水に含まれる塩分のせいで余計に渇いてしまうじゃないですか。そういう感じなんですよね。

好きか嫌いか、と聞かれたら私の回答は「多分好き」です。好きと断じることかできるほどこの作品を許容できてはいないのだけど、嫌いと突き放せるかと言われたらそうではない。最高にグロテスクな表現の向こう側に、抗いがたい魅力が確かにあるんですよね。

再三書いてきたように私の頭の中はまだ全く整理されてないので、この感覚をどう表現していいのか迷ってる部分もあるんですけど、でもひとつだけ言えることがあります。

出演者全員が演技うますぎて怖い

演技がすごい人たちがすごい脚本を演じるとこんなにすごい!という小学生でも書かないような感想の言葉で締めたいと思います。だって!!!!実際すごかったもん!!!!

 

以上です。