月とすっぽん

『髑髏城の七人 season月 上弦』を見たのでいつものように感想です。3回目なのでもう前置きさえも削りました、ぱふぇです。胃の調子が最悪なので鳩尾のところがクソほど痛いです。

さて、今回で三作目の髑髏城。もうね、いい加減にシナリオも覚えてきました。ええ、ええもうちゃんと沙霧が髑髏党に追われて襲われるところから話が始まることくらいね、そこで家康が出てくることくらいね、もう覚えてますとも。鳥と風じゃあ全然違うシーンでしたけど、でも大枠は同じでしたからね!さて、今回はどうやってストーリーが始まるのかな、沙……

天魔王やないか〜〜い

出オチ?なに?出天魔王?

あらすじ部分で突如として天魔王、えっ嘘待って、鎧入手シーンの描写あるんだけどなにそれ聞いてない待って、天魔王今回もクセが強いぞいやまあ風がプレーンすぎたんだけど……、おっ、沙霧が追いかけられるシーンの例のセットだ、沙霧〜〜待ってたよ沙……

男やないか〜〜い

えっ……霧丸?どちら様?家康出てこないし……、荒武者隊じゃん……、えっ荒武者隊……?えっ……?

 

髑髏城、見る作品毎に毎回完全に設定が違ってるんですけどマジでどうしたらいいんですか、世界にひとつだけの髑髏?ナンバーワンにならなくてもいい元々特別なオンリーワン?そういう感じ?いや〜開幕からいきなり動揺しました。びっくりですよ。

今回の髑髏城で一番大きい変更点は沙霧が男ってところですね。今までは捨之介と沙霧の間には恋愛に近い信頼関係があったからこそ、天魔王に操られた捨之介を救えたという側面があったんですけど、今回は同性同士ということで、ここをどう調理するのかが個人的に見所だなと思っていて。結果はーなるほどね!?と叫ぶ程度にはなるほどねという展開だったのでこれからそういう話をしていきます。

 

 

まずはいつも通り捨之介の話から。

今回の捨之介は若さがあって、なんていうか

週刊少年ジャンプ

でした。週刊少年ジャンプ。なんていうか今のところ一番浮世の縁も昔の義理も三途の川に捨之介してそうという感じでした。福士蒼汰が演じているのもあって、今までより若々しかったせいかわりと早く立ち直ってそうな印象が強かったです。というか本編の地点で既にある程度過去は決別できてるような印象でした。若いと傷の治りが早いなあ。

というか、沙霧が男の子になり霧丸に変わったので、これまで見てきた二作とは味付けが違ううんですよね。これまでの捨之介はどちらかといえば本人が後ろを向いていて、沙霧という存在が彼にまた前を向かせてくれたところがあると思うんです。彼女の気丈さが捨之介の目を覚まさせたというか。一方この上弦、捨之介にとっての霧丸は昔の自分みたいな立ち位置かなと思ったんですよ。一族を殺した天魔王に復讐したいと告げた霧丸を諭す捨之介の言葉には、俺と同じになっちゃいけねえと止めようとする気持ちがすごくはっきり滲んでいて。なんか他髑髏よりも過去に囚われている自分をはっきり自覚しているからこそ、他の人に自分のような苦しみを背負わせてはいけないと思ってるよなって感じがしたんですよね。

さらに、今回の捨之介は天魔王を倒すとは言わず、救うって宣言してるじゃないですか。過去に囚われ続ける苦しみから天魔王でさえも解放してやりたいと思ってるんですよ今回の捨之介。その熱量は他にないし、これは間違いなく若さ故にできることだよなぁと思いました。なんていうか「俺は助けるぜ、リオも、地球も、アンタもな!」に近くて。

ただ、わかると思うんですけど、もう天魔王って助けるとかそういうレベルじゃないじゃないですか。それこそクレイの屈折ってプロメアが原因なので可逆性があるじゃないですか。プロメアが消えれば彼を蝕むものはもうない。だけど天魔王の屈折は生き様レベルなので簡単に戻せるようなものじゃないんですよ。彼を本当に解き放つ方法があるとしたら、それは多分殺すこと以外にはないと思うんです。ほら、人間の味を覚えたクマと同じ。一度知ってしまったらもう戻れないから、殺すのが最も確実な方法になってしまう。彼そういう存在だと思うので、それを救えると思うところもまた若さゆえの青さとでも言えばいいでしょうか、そういう未熟さみたいなものも全体的にすごい滲んでました。

好きか嫌いかと言われたら好きです。

 

 

さて、次は霧丸のことを語りたいんですけど、とりあえずこれだけ言わせてくれ!

フィジカル〜〜!!!

強くて笑った。沙霧も沙霧で風とかは逞しくもあったんですけど……、男の子なだけあってめっちゃパワフルで笑ってしまった。つよいつよい。例の切るたびに研ぐ突くたびに打ち直すに参加してたし。バケツリレーよろしく贋鉄斎から受け取った刀を捨之介に渡してて笑っちゃった。

あと殺された一族の皆を弔うシーンがなくなっててびっくりした。あっそこないんだ〜〜!?!?!?ってなった。あのシーン好きだったんですけど、まあ確かに霧丸があれやるか?って言われたらやらんだろうな……ってなるからカットもやむなし。そんな感じでちょこちょこシーンがなくなったりしてるので、序盤はシーンの流れが違っててちょっと新鮮でした。

男の子になったことで一番印象が変わったな〜と思ったのは極楽太夫とのやりとりですかね。ほかseasonではなかったやりとりが入ってたのもあるんでしょうけど、なんかすごくお母さんと息子っぽくて。太夫がちょっと年齢高めに設定されてた分、人生経験豊富そうで頼れる女っぷりが強かったのと、霧丸が言うことあんまり聞かない部分あるので、なんかすごい反抗期の息子みたいでめっちゃほっこりしました。かわいい。

あと、霧丸順応性高くないですか……???兵庫がフられるか否かで賭けやっててめっちゃ笑ったんですけど。いや沙霧の時はわかんねーって顔して呆然と成り行き見守ってたとかあったじゃないですか。突然連れてこられて急に大騒ぎされてなんだこいつらって感じになるの当然なんですけど、霧丸ふつうに馴染んでてすげーなこいつ!ってなりました。

 

 

で、蘭兵衛の話をします!

今回の蘭兵衛、強くなかったですか!?

まず向井蘭兵衛ってこう、繊細というか脆いというか、そういうちょっと綱渡り的な魅力があったじゃないですか。あと早乙女蘭兵衛、彼も同じで、確かに強いのに花のように繊細で崩れ落ちてしまいそうな危うさを体の内に飼ってるところあると思うんです。花で言うと月下美人とか百合みたいな。二人とも闇堕ちすると花が手折られるようなそういう痛々しさと倒錯的なゾクゾクとする感じあったんですよね。なんていうか、ちょっと女性的な魅力?そういう感じでした。実際女性が演じてるときもあるみたいですしね。

逆に今回の三浦蘭兵衛は前者二人と違って男性的な部分が強い気がするんですよね。太刀筋もかなり力強くて一撃が重たそうだったし。儚さが付きまとっているわけではないんですよね。そうそう、線の細さがあんまりないんですよ前の二人と比べて。それは見た目的なものじゃなくて、演技的なところでそう感じて。さっきも言ったんですけど戦いっぷりが優美さよりも強さに重きを置いていて、そこが今回の蘭兵衛はこういう選択をしたか〜!みたいな気持ちにさせられたんですよね。

見てないのに勝手なイメージでものを語る毎度恒例のアレをやらせてもらうんですけど、たぶん花の蘭兵衛も同じように男性的な骨格がっしりした蘭兵衛じゃないかなって思いました。蘭兵衛には2パターンある。

 

 

それで天魔王なんですけど、鳥とも風ともまた違った印象を受けてほんとに振れ幅を大きく作られた役だなといつも通りに感心しました。

早乙女天魔王、あまりにもラスボスすぎて。いやこれラスボスでしょ。鳥の天魔王は印象に残る中ボスだし、風の天魔王もイベントが印象的な中ボス。そして今回の上弦天魔王がラスボス。そういうゲームじみたところある。

あと今回はなんていうのかな、絶望を飼い慣らした化け物とでも言えばいいかな、そんな印象を受けて。鳥は好きな子の気を引くために意地悪する幼い子供のようなものを感じたし、風は落ち着きあるフリをした子供のごっこ遊びの文脈だったなーっていう印象があるんですけど、今回の天魔王はそういう幼児性はあまり感じなくて。たまに剥き出しになる時はあるんですけど、そこ以外はなんていうかな、巧妙に巣を張り巡らせた蜘蛛みたいな印象がありました。一番生きてきた時間が長そう。不思議ですよね、演じてる人一番若いのに。

老獪、とまでは言わないんですけど、信長への思いはまだその胸にあるのだろうと問いかけ、私を殺してもいいがそれならば秀吉の首を取れと実質的な敵討ちをそそのかし、最後の駄目押しで信長が蘭兵衛にかけた言葉を投げかけて堕とすという順序が凄くしっかりしててビビりました。巧すぎるぞ。まあ鳥の天魔王も似たような内容の勧誘してたんですけど……、あの人の場合はそこまでやる余裕がなさそうだったので……。

あ、ちょっと名前忘れちゃったんですけど側近の女の人いるじゃないですか。鳥も風も用済みとばかりに切り捨てられたことに驚きながら死んでいくんですけど、あの人今回笑って死んでいったじゃないですか。その違いが脳裏に焼き付いてるし、あの人と天魔王の関係も母と子に見えたんですよね。エゲレス海軍が来られなくなったと報せを受けたとき、自分が逃げることを知る人間は少ない方がいいと語るとき、腰に縋りついてるのがそう感じさせて。めっちゃ平たく表現するとしたら、嫌なことがあったよふぇーんママァ!みたいな。幼子のような精神不安定さを彼女は知っていて、だからこそしょうがないわね坊やとでも言うかのように、微笑みながら天魔王の持つ刀を自らの胸へ飲み込ませたかなと。勝手な印象ですけど。

そういえば私の中では天魔王が信長に成り代わりその座に就いた理由を信長の解釈違いと呼んでるんですよね。いや、怒られそうなこと言いますけど、なんか森蘭丸ばかりを気にかけ自分に目もくれなかったことを語り「そんなのは殿じゃない」と叫ぶのがこう、解釈違いを起こしたオタクみてえだな……って……。

誰より信長を崇拝し、誰よりも信長を憎んでる矛盾が凄くて、そういう矛盾を生んだのが解釈違いだったかなと思うんですよ。自分の理想の信長像とかけ離れて行くことが嫌でたまらなくて、だから明智を唆すという間接的な手段でもって殺したのかなっていう。それでも信長を崇拝する感情は消えなくて、だったら自分が理想の信長になればいいという結論に至ったかなあって。こう、なんていうか人の死なない公式に業を煮やして二次創作では人が死にまくる暗い話ばっか生産するタイプのオタクみたいな……。

あと承認欲求の塊のくせに、酷く臆病でちっぽけなところも最高に矛盾してますよね。

 

 

で、また箸休めに贋鉄斎の話をするんですが、今回もまた……、なんかおかしいおじさんでした。華道だよ。お花咲かせてたよ。どうなってんだよ。

花でぶっ飛んだ贋鉄斎をやったから鳥以降ももれなく全部ぶっ飛んでしまったらしいんですけど、それにしても毎回あの手この手で飛ばしてくるから楽しいですね。雷に撃たれすぎて帯電、男の子大好き蕎麦職人、剣華道家木偶坊贋鉄斎。ラインナップが濃すぎる。一体花では何をしたんだ……。

あと今回ちょっと印象的だったので極楽太夫にも触れたいんですけど、メインの人たちが若い中で極楽太夫がわりと年上だったわけですけど、これがま〜〜逆に安定感あってよかったんですよね。さっきも言ったんですけど、今回の太夫はめっちゃ人生経験が豊富そうで、なんか悩み事相談したら美味しい物でも食べて忘れなさいよって笑いながらすっげー美味しい煮物とか食べさせてくれそうな感じがして……。そんな感じしません……?鳥も風も美しくて芯の強いかっこいい女!って部分が強かったので、この感じ意外だったと同時に、誰もを受け入れる里の女はこうでなくちゃあな!と思わせる包容力があって凄く良かったです。あと個人的な話なんですけど、カタコトじゃないまともな日本語を喋って演技してる高田聖子さん見るのが初めてだったので普通に新鮮でした。たまにカタコトになってたけど。

 

 

 

というわけでつらつら書いてきたんですけど、今回の感想は

若さにフューチャーした髑髏城

でした。あんま触れてないんですけど、捨之介のみならず兵庫も結構週刊少年ジャンプ的な文脈だった気がするんですよね。なんかそういう若さゆえの勢いを強調してたなあっていう。とにかく全体的に前向きな勢いがあった気がします。そしてメイン男たちがパワーで突っ走るから、天魔王や極楽太夫は敢えて落ち着きを重視しているなあという感じで。最初キャスティング見たとき攻めるな〜と思ったんですけど、安定感のある脇の固めっぷりが凄くて万全のサポート体制じゃんってなりました。

 

というわけでですね、浮世の義理も昔の縁も捨之介できたと思いますか?1000人街頭インタビュー結果みたいなものを独断と偏見で作りました。

 

これが福士蒼汰の捨之介。

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なんかめちゃくちゃ長生きしそうじゃないですか、この捨之介。ジジイになっても霧丸と笑って生きてそう。めっちゃ想像できる。

 

そしてこっちが松山ケンイチの捨之介。

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操られた捨之介の目を覚まさせるために沙霧が危険を顧みず真正面に立ったあのシーン、絶対スチルあると思う。あと脇腹刺しちゃったシーンね。泣きそうな顔の沙霧と微笑む捨之介のスチルが見える。そしてこの辺全部まとめて後から回想とかそういうメニュー開いたら見返せる。

 

で、これが阿部サダヲの捨之介。

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鳥捨之介のこと、マンボウだと思ってるところある。

マンボウはすぐ死ぬイメージがすごい魚

 

下弦はこの上弦と同じシナリオみたいですけど、演者が変わったら一体どんな印象が持てるのかとても楽しみです。

以上です。