イグザクトリィ

宣言通り髑髏城の七人を履修しました!

契約しててよかったWOWOW

おバカさんなので髑髏城無限にありすぎてわからん!とか言ってたんですが、そんなこと言ってたら一生見ねえなと思い、とりあえず一番直近でWOWOWで放送してたやつを見ました。

というわけでseason鳥からの履修です。後述しますが花はキャストに思うところしかなかったので見事に放送を逃した事実に打ちのめされています。困っちゃいますね。

それにしても、同じ作品をキャスト演出脚本全て入れ替えながら演じるの、めちゃくちゃな福利厚生じゃないですか?

 

 

 

 

さて、つべこべ言わずに話を進めていきますが、私がまず真っ先に思ったことが

お手本のような中島かずき脚本

でした。お手本のような中島かずき脚本だ。当ブログの記事を読んでくださっている方々はご存知だと思いますが、一応書いておきますね。

中学二年生の時、同じく劇団☆新感線の作品『蛮幽鬼』を膝に受けた私が『プロメア』にどハマりし、その文脈を少しでも味わいたくて『キルラキル』と『グレンラガン』に手を伸ばし、まだ足りぬと言わんばかりに今回手を出したのが『髑髏城の七人 season鳥』だったわけです。

ここまで短期間に情報を詰め込んだんです、まあ当然この文脈は……!ってなりますよね。なりました。展開の熱さと人の思いの深さ、時にコミカルに、時にパワフルに進んでいくシナリオ。そして何より、根底を流れる人間の持つ強さへの賛美。そういう中島節とでも言うべきものをめちゃくちゃ感じました。

ただ……、これ鳥の演出の方針だと思うんですけど……、めちゃくちゃ遊びが多くなかったですか!?実は私、舞台作品がとても大好きで、好きすぎて中学の時に文化祭のクラス演劇の脚本を書き下ろしたくらい好きなんですが、ミュージカルテイストがあまり得意ではなくて。セリフの一つ一つを噛み締めたい人なので、歌にセリフを乗せられると集中切れちゃうんですよ。しかも、新感線の舞台で唯一知っているのが『蛮幽鬼』ですよ。詳しくないので恐縮ですが、新感線の舞台の中でも特に遊びの少ないシリアスな作品を愛してしまっている。お陰でなかなか流れに乗れなくて。

特に冒頭。かなりドタバタというか、スラップスティックな味付けがされているんですよね。えっ捨之介!?おにぎり!?極楽大夫が歌って踊って!?みたいに。目まぐるしく変わる舞台はチカチカと眩しくて、同時に勢いに呆然としちゃって。しばらくぽかーんとしてました。ただ、一度掴めてしまえばこちらのもので、あの激しい緩急の渦に飲み込まれると楽しいんですよね。そういえば、WOWOWの放送では最後に演出いのうえひでのり氏へのインタビューが入ってたんですが、前作の花が正統派だったので、今作の鳥はかなり遊びを入れたと語っていて、あ〜〜、そうでしょうね〜〜!!!!ってなりました。

 

演出や脚本の話はここまでにして、とりあえず中身を語りたいんですけど、どこから何を語ればいいんでしょう。とりあえず登場人物の話かな?

じゃあまず捨之介ですね。なんていうか、彼の底抜けな力強さと、どこか漂う諦めの匂いがめちゃくちゃ魅力的でした。明るくて強くて、わかりやすく主人公気質、だけど生きることを心のどこかで諦めている。それは誰かを見殺しにしてまで誰かを助けるなんて器用な身の振り方ができない優しさが、不器用さが生んだものなんですよね。主君を失うことに繋がってしまったという後悔が、心の底にずっと渦巻いている。だけどその感情に飲まれなかったのは、多分彼を信じてくれた仲間がいて、彼らを守りたいと思うことで前に進めたからこそなんだろうな〜〜と思いました。今回阿部サダヲ氏が演じてましたけど、結構シリアスな設定の捨之介が、いい意味で湿っぽくなりすぎずに気持ちよく見えたのは、彼の演技に依るところも大きそうですね。後ろを向くより、前を向いて笑ってるのが似合う気持ちのいい男って感じでした。あ、あんまりわかんない今のうちに言っとくんですけど、多分この捨之介って他とちょっと違いますよね。恐らくですけど。今回はコミカルで明るくて溌剌としつつも淀みを残してましたけど、なんかもっとこう、うまく言えないけどカミナとかガロ・ティモスみたいな演じられ方の方が多そうな役だなあという印象を受けました。

実際、後で調べたんですけど、他タイトルでの捨之介役、小栗旬とか松山ケンイチとか宮野真守でもうね、めちゃくちゃわかるし、わかるからこそ阿部サダヲは多分異色だなぁと。俄然見るのが楽しみになってしまった……、ずるいわ、こんなのずるいわ……。

そして沙霧、彼女もまたいいポジションでしたね。捨之介を見抜くのが、嫌味も湿っぽさもない彼女の役割なのが凄く納得でした。

捨之介とはまた別ベクトルで気持ちがいい子なんですよね。真っ直ぐでパワフルで、生き急ごうとする捨之介に喝を入れる強さがあって。一族郎党皆殺しにされた壮絶な過去を持ちながらも、必要以上にそれを引きずることもなく、だけど忘れることもせずしっかり前を向いて立っていて。だけど普通の女の子としての顔も持ち合わせているんですよね。凄く魅力的でした。

そんな沙霧と違い、女のしがらみの色が濃いのが極楽太夫なんですよね。美しさと懐の深さを兼ね備え、戦に巻き込まれ行き先を失った女たちが生きていける場所を作りたいと願った彼女は、少女っぽさの強い沙霧とは正反対の大人の女性でした。彼女はただ、何にも脅かされずに生きていける場所が欲しかった。それだけなんですよね。愛した男がいて、守りたいものが笑って暮らせる場所がある。それだけでよかったはずなのに、戦いが彼女の小さな幸せをいつもズタズタに引き裂いてしまう。だけど痛みを味わってもなお、それでも立ち上がる力強さを持っている。その強さがあるからこそ、逞しく生きられるし、同時に深く傷つくこともあるんじゃないかなと。だって蘭兵衛に向けて機関銃を撃つあのシーン、あまりにも壮絶すぎたじゃないですか。引きたくもない引き金を、ほかでもない愛した男のために引くあのシーン。彼女が最後には幸せに向かって歩いてくれたことはとてもよかったです。あの悲痛さを知っているからこそ余計にそう思いました。本当に良かった。

 

でね、無界屋蘭兵衛ですけどね、こんなの好きに決まってるだろいい加減にしろ。

ほんとにいい加減にしてほしい。好きじゃん……、好きでしょ……、なんだこの好きを固めたような概念は……。見た瞬間からなんでこんなに好みの男がいるって誰も教えてくれなかったんですか!?ってマジギレしてたからなこっちは。

だってまず見た目。無類の銀髪好きなのでまあ、刺さるよね。無造作に下ろされた長い銀髪、好きだよね。そんな髪を優雅に靡かせ、白い着物の裾、赤の花を美しく舞わせながら戦う太刀筋の美しさよ。殺陣が美しいのはまあ知ってたけどそれにしても一人だけ作画が違う。おかしい。美しい。

そして設定。まず極楽太夫の夢見た村を共に作った男でな、わかる、わかるよ。そして森蘭丸ですよ、織田信長に愛された小姓の。わ、わかる……、めちゃくちゃわかる……。超似合う……。なんだこれ……。

そんな男がさ……、捨之介と同じように過去を捨て名を捨て生きてるんですよ……、だけど彼とは違って、信長のことを過去に出来なかったんですよね……。割り切ることも乗り越えることもできてはいなくて、本心を覆う鎧を纏って生きてたんですよね。そこを天魔王に見抜かれて入り込まれてしまって。

あっ、あの、あの君も髑髏党に入ろう!新規党員勧誘シーン(言い方)めちゃくちゃヤバくなかったですか。村を守りたい、極楽太夫や村の皆という今の生活で得た関係性を守りたいと思う気持ちは確かにあるけれど、天魔王が囁く言葉に揺らぐ気持ちも確かにあって。亡き信長の悲願を叶えようという甘言に乗せられそうな自分を必死に止めようと苦悶するあの表情、それをあざ笑うかのように彼の体を這い回る手、いいように弄ばれ、天魔王の口から血を模した酒を飲まされる。先述の通り、スラップスティックで喜劇的、パワフルなシーンが多かった中でのこの異様なまでに官能的なシーン、印象に残らないはずがない。悔しそうに堕ちるあの表情よ。血を吐きながら一度は信じたものを裏切る己を責めるように顔をしかめているのがあんなに美しいんですよ。なに?あれなに?合法?

そして天魔王の側についた彼がまたね、美しい。長い髪を束ね、身に纏うのは赤と黒。酔っ払ったような覚束ない足取りなのに、流れるような太刀筋で守るはずの村をボロボロに壊していく。破滅がとにかく美しい。あまりにも残酷で、残酷であるがゆえに美しい。こんなのずるい……。

さらに天魔王に裏切られながらも、一度決めた道を違えることを是とせず天魔王を守る側の人間として死ぬ覚悟を見せたところもあまりに壮絶で美しい。自分を愛している女に引き金を引かせるだけの説得力を持った行動、言動。ずるい、本当にずるい。もう全部がずるい。早乙女太一という役者、所作がマジで美しいので、その美しさを惜しみなくさらけ出させるこの演出とあまりにも相性が良くて私はもうどうしていいのかわかりませんでした。天魔王の言葉に心を揺さぶられ、自分の体を這いずる手に身を委ねてしなだれかかるあの動作の艶かしさよ……。

なお他seasonでの蘭兵衛役ですが、花が山本耕史だったので血を吐いてぶっ倒れました。いつぞやの記事でも書いたのですが、私はめちゃくちゃ大河ドラマ新選組!』が好きで、特に土方歳三が好きでたまらなかった女で、主演の心を開かせた彼のエピソードが無限に大好きなオタクなので本当に無理でした。助けろ。あまりの恐怖にゲキシネ予告動画を見たのですが、どこまでもお耽美で線の細いイメージな早乙女蘭兵衛とは違い、信念を曲げられない男っぽさ抱えた蘭兵衛という感じで、かっこよさが強いようなのでとりあえず安心しました。早く見て比べたい。むり……。

 

そして天魔王なんですけど、これもうぜ〜ったい演出によってキャラクターの味付け違うよなって思いました。圧倒的で底が知れない悪として描くことも、強大な絶望の象徴として描くこともできる存在じゃないですか?天魔王って。そんないくつもの可能性の中から選ばれたこの作品での天魔王、あまりにもクセが強い。毒々しいのに妙な小物臭がし、底知れないのに浅くもある。矛盾した印象を抱かせる。読めないんですよ、何も。そこがあまりにも恐ろしい。

そんな彼の解釈、めちゃくちゃ難しいんですよね。読めないから。信長の意思を継ぐのが目的ではなく、かといって彼が何かをしたかった形跡は見えなくて。なんていうか、私の中ではただひたすらに信長から必要とされなかった己を持て余しているようなそういう印象を受けました。好きなあの子を振り向かせたくて悪戯を繰り返す男の子のような、極めて稚拙な部分が見えるなあと。だけどそんなことをしても当然振り返っては貰えないんですよね。だから駄々をこねて暴れてるような、そういう印象でした。実際、最後を看取った彼に対して信長は言葉をかけることもなく、ひたすら蘭丸のことを案じていただけという事実が露呈しますし。

このアンバランスで不気味なところを森山未來の演技が上手いこと表現しててすげー良かったです。っていうかさっきもちょっと言ったけど、天魔王は解釈や位置付けがすごく自由でフレキシブルな存在だから、演者の特性を引き出しやすいんだろうなって思ったりするわけです、はい。

ちなみに、下弦の天魔王役が鈴木拡樹と聞いてそれは恐ろしく気になるな……と思いました。なるほどよく似合う。一見すると蘭兵衛っぽいんですけど、よく考えると天魔王が超似合う。っていうか彼が蘭兵衛だったら愛の敦盛を独占してしまいますね。君だけだよおらん。

 

真面目な話をしたのでスラップスティック代表選手、贋鉄斎について触れたいんですけど、とりあえず声聞いたことあると思ったらロージェノムで笑いました。なんか聞いたことあ……、ロージェノムじゃん!?ってなった時の私の気持ちよ。マジかと、マジなのか、と。キルラキル粟根まことさん出てたのに気づいた時もだいぶ面白かったんですけど、またなんか中島かずき〜〜!ってなるキャスティングが発覚するとは思わなくて……。言われりゃ池田成志さんのお名前見たことあるわ……、エンディングで流れてたわ……。

いやそれにしても贋鉄斎、完全にギャグパート担当でしたね。ハンマーで殴られて蘇生するの笑ったし、ハンマーの柄がひん曲がってて笑いました。ずるい。こんなのずるい。何回殴られてるんだよ、じわじわくる。全体的におもちゃ箱ひっくり返したみたいな味付けですけど、この人の出てくるシーンは特にその味付けが濃くてめちゃくちゃ良かったです。雷を浴びすぎて帯電してるってどんな設定だよ。その電気を放電して砥石回したり磁石にしたり、なんだよやりたい放題じゃないか!楽しそうだな!

しかし贋鉄斎役、風で演じてるのが橋本じゅんさんでもうダメでした。絶対面白いじゃん……、もう絶対面白いじゃん間違いねえよ……。約束されし愉快でしょ……。っていうかいずれかの髑髏城に出てるのは知ってたので、贋鉄斎が出てきた瞬間に「あっ絶対この役でしょ」と思ったら案の定風で演じてた……。めっちゃ見てえ……。

 

 

 

と、見事に蘭兵衛周りでずぶずぶになりました。そうでしょうね、好きの文脈だもんね。

いのうえひでのり氏が自ら正統派から外したと言っているだけあって、たしかにすごく賑やかな演出になってました。ただそのせいかな、やっぱりちょっと入り込めなかった部分がありました。最初に書いた通り、ミュージカルはセリフを追いかけるための集中力が一度切れちゃって得意じゃないので……。特に、今回は髑髏城初見で全く何も知らないところから見てたので、そういう意味でも私にはちょっと厳しいテイストだったかなあと。

正統派で演った花から攻めたほうが私的には入りやすかったのかなあ。ただ、他と見比べてないので何とも言えませんが、天魔王のクセになる外連味と蘭兵衛の匂い立つような色気は多分この演出じゃないと味わえないんじゃないかな〜〜とも思ったので、これはこれでアリな気もしますし、これはこれで好きです。そういえばこの二人、ワカドクロでも同じ役なんですよね。あ、でもワカドクロがどんな演出であろうと、口説き落とすあのシーンがあんなに蠱惑的なのは鳥だけだろうなという確信だけはしてるぞ。間違いない。ワカドクロに限らず他も絶対にあんなシーンじゃない、絶対違う。

すでに全作見比べたい〜〜!モードの私ですが、とりあえず動機がプロメアなので風は押さえておきたいなと思うし、散々言ったように抗えないので花は絶対見たいですね。

で、

次にWOWOWで放送があるの、風なんですよね。

終わった。終わったねこれね。主演が松山ケンイチ。ガロを演じるにあたって捨之介を参考にした松山ケンイチ。もうだめだ。家康は生瀬さんだし。やさぐれパンダじゃん、南極料理人じゃん、好きじゃん。更にさっき書いたけど贋鉄斎はじゅんさんだし、わぁい!兵庫は山内さんじゃん……、なんか最近この二人出てる舞台の円盤買ったぞ……。はい。頑張ります。

 

多分なんですけど、このseason鳥は他と比べないと上手く判断できないんじゃないかな〜〜と思うので、ここでは好きとか嫌いとかの判断は保留にしておこうかなと思います。普通にめっちゃ面白かったんですけど、やっぱり普通に演じるとどんなテイストなのかを知りたいし、他のキャストが演じているのを見てみたい、他を知った上で語りたい!という感情が抑えきれないので。

あと、何気に『蛮幽鬼』以外では初めての新感線作品だったんですけど、まあ演出が賑やかなこれと比較するのもどーーなの?って感じなんですけど、にしても『蛮幽鬼』ってほんとに抜きん出て暗い話なんだなと改めて思いました。グレンラガンで例えると、ヨーコとロシウ以外全員死んでるのがあの作品なので……。気になった人は是非見てください。めちゃくちゃ好きです。みんなでサジに情緒をボロボロにされよう!

関係ない話ばっかりになってきたのでそろそろ締めます。髑髏城マラソン、がんばるぞい!

以上です。